こんにちは、ミキです。
今日は、誰にも――もちろん夫にも――話すことができない、私の小さくて深い罪について書こうと思います。 仕事中、ふとした瞬間に身体が疼いてしまう。 それは、家庭という安定した場所にいるはずの私が、無意識に求めてしまう「毒」のような時間。
もし、隣のデスクの同僚が私の手元を見たら……。そんな想像だけで、胸の鼓動が早くなってしまうのです。
……日常の隙間に忍び寄る、熱い疼き。
午後の会議が終わり、少しだけ静かになったオフィス。 パソコンに向かう私の指先は、キーボードを叩きながらも、どこか上の空でした。 タイトなストッキングの中で、不意に訪れる熱い感覚。一度意識してしまうと、もう仕事どころではありません。
「少し、席を外しますね」 平静を装ってそう告げ、私は資料を抱えて、普段は人が来ない奥の資料室へと向かいました。
……資料室の静寂と、掠れる吐息。
重い扉を閉めた瞬間、心臓の音が耳元まで響いてくるのが分かりました。 埃っぽい紙の匂いと、冷房の音。 私は壁に背を預け、震える指先をタイトスカートの奥へと滑り込ませました。
「……っ」 ストッキング越しに触れる、自分の熱。 誰かに見つかるかもしれない、扉が開くかもしれない。その恐怖が、指先の感覚を通常の何倍も鋭敏にさせていきます。 指を動かすたびに、静かな部屋に私の衣擦れの音だけが小さく、けれど鮮明に響いていました。
……不意に響く、侵入者の足音。
その時でした。 廊下の向こうから、カツン、カツンと近づいてくる複数の足音が聞こえてきたのです。 「例の資料、確かこの資料室にあったはずだよな」 聞こえてきたのは、上司と若手の同僚の声。
頭の中が真っ白になりました。今、扉を開けられたら、スカートを捲り上げ、指を這わせているこの姿を晒すことになる。 慌てて指を引き抜き、乱れた衣服を整えようとしますが、震える手は思うように動きません。 ガチャリ、とドアノブが回る音。私は声を殺し、扉の影で息を潜めました。
……隠しきれない、濃密な熱の徴候。
「あれ、鍵がかかってないな。……ミキさん? 入ってたのか」 上司が怪訝そうな顔で部屋に入ってきました。私は慌てて手元の資料を整理するふりをしましたが、全身から溢れ出す熱気が隠せません。 狭い資料室の中に立ち込める、私の身体から発せられた甘く、重い、独特の匂い。
「……ミキさん、なんだかこの部屋、少し変な匂いがしませんか? 芳香剤か何か変えたのかな」 若手の同僚が鼻を掠め、私に一歩近づきました。 その瞬間、心臓が跳ね上がるのを感じました。もし彼がもっと近づけば、私のスカートの下から漂う、隠しきれない「欲」の匂いに気づかれてしまう。
……防波堤を崩す、背徳の絶頂。
指摘されそうになった羞恥心と、すぐそばに男性がいるという究極の恐怖。 「……っ、そうでしょうか。古い紙の匂いかもしれません」 声を絞り出すのが精一杯でした。けれど、その極限の状態が引き金となり、私の身体は最悪のタイミングで限界を迎えてしまったのです。
彼らの目の前で、音もなく訪れる強烈な絶頂。 私は崩れそうになる膝を必死に支え、指先に力を込めて資料を握りしめました。 彼らは、目の前の清楚な女性社員が、今まさに「匂い」と「絶頂」の渦の中にいるなんて、夢にも思わないでしょう。
……何食わぬ顔で戻る、いつもの日常。
「……失礼します」 なんとかそれだけ言い残し、私は彼らの間をすり抜けて廊下へ出ました。 背後で「やっぱり、なんだか色っぽい匂いがするよな……」という同僚の囁きが聞こえた気がして、私は一度も振り返らずに自席へ戻りました。
デスクに戻り、再びキーボードを叩き始める。 けれど、今もストッキングの内側には、拭いきれなかった熱の余韻と、私自身の濃厚な残り香が、重く、甘く漂っているのです。

